通信制大学のすすめ
経済環境の悪化に伴い、子供に大学進学を諦めさせるケースは今後増えるのではないかと危惧する。たとえ子供が優秀でやる気があってもである。
実にもったいない話である。
世に通信制大学というものが存在することを知っているのであろうか?
戦後すぐに、まだ多くの人が貧しくて、また地方在住でとても都会の通学制の大学には行けないが、学習意欲の高い人たちの為に法制化された正規の学校教育なのである。
多くの教育熱心な方々の大変な努力の賜物であろうと察しが付く。
こういうことはもっと世に知られて良いはずであるが、高校の先生が経済的な余裕のない家庭にこういった提案をしたという話はあまり聞いたことがない。
子供の数が減ってきて、大学間の学生の取り合いが背景にあるのかも知れない。
今また、よく似た状況が現出しつつあると言えるのではないだろうか?
ならばこの通信制の大学教育をもっともっと積極的に活用すべきではなかろうか。通信制であるが故のメリットもデメリットももちろんある。
最大のメリットは学費である。そして、基本的に時間的な制約を受けないから働きながら、つまり学費を稼いで生活しながら勉強ができるのである。経済学でいうところの opportunity cost 的にも利はあるのだ。
もちろん楽ではない。家からたっぷり仕送りを受けて、勉強よりも学生生活を楽しもうと考えているなら話は全く別だ。でも苦学のメリットは代えがたいものがある。
しっかり学べは大学の卒業単位は4年でしっかりと取ることが出来る。18歳で入学して22歳で卒業していく若者もたくさんいるのだ。
そして、地方にいても首都圏の有名大学の学位を得ることが出来るのだ。
私が勧めるのはその素晴らしさを知っているからだ。私は50代半ばで慶應義塾の通信制へ入学した。18歳から70歳半ばぐらいまでの人たちが一生懸命学んでいるのである。その真剣さが伝わり、刺激を受ける。同じ年代の若者が集う通学制にもメリットはあろうがそれに決して引けを取るものではない。年配の学生から学べることも大きなメリットだ。
私の時代は大学進学率20%。別に行きたいとも思わなかった。行かなくても不都合もなく、経済状況が許さないもの皆似ていて不満もなかった。しかし、この点は今は少し異なるだろう。日本だけでなく世界の国々(アジアの国でも)が高学歴化している中で、そして、国際化が進む中でやる気も能力もある人が、経済的理由だけで大学教育を諦めるのは国家としての損失である。
先ずは世の中の制度を知ってもらいたい。世の中を二者択一で生きねばならないなんて実につまらない。社会に出てからもそんな単純さでは成功はおぼつかない。
諦めている人に知ってほしい。そんな人が身近にいる人にも知ってほしい。高校の先生にはもっとよく知って、積極的に子供の将来に役立ててほしい、と願う次第である。